だから聖女はいなくなった
 聖なる力によって、感じられないものを感じられるようになった。それで気になったのが、ベッドの下の床下の場所だった。理由はないけれど、気になった。
 気になったら、それを確認したくなる。

 ベッドの下をのぞき込み、床板に手をかける。驚いたことに、これは簡単に外れる作りになっていた。いや、もしかしたらそれすら聖なる力によるものにちがいない。その力に導かれて、ここを見つけたのだ。

 床下から出てきたのは、手紙だった。誰宛てに書かれた手紙かはわからない。宛名は書かれていなかった。
 自分宛ての手紙ではないだろうと思いつつも、それを手に取って読んでみる。
 結局、誰宛てに書かれた手紙でもなかった。
 だた、聖女と竜の関係について書かれていた。読み進めていくうちに、手紙を持つ手が震える。

 これは、他の者には知られてはならない内容だ。

 ミレイナはすべてを読み終えると、手紙があった場所にそれを戻した。

 今までこれの存在が明らかにされていないことを不思議に思いつつも、震える手で床板を元に戻した。
< 155 / 170 >

この作品をシェア

pagetop