ごじうおん

せ:戦況は最悪で

敵の伏兵を看破出来なかったお陰で、勝利の天秤は一気に相手に傾いた。
後続の部隊との連絡は途絶えた女剣士は、数多の兵に取り囲まれ、数が質を上回る事実を身に染みて実感していた。

厳つい具足を嵌めた足で地面を力強く蹴り上げ、後ろに砂利を飛び散らせつつ、もう一方の足を軸に反転する。
蹴った足を兵の方にあえて深く踏み入れ、低い姿勢から半ば体当たりに近い形で相手の首元に剣を滑らせる。
首から血潮を吹き出す屍を押しのけ、女戦士は崩れた包囲から一時的に抜け出そうとするが、直ぐに他の兵が進路を塞ぐ。

女戦士は舌打ちし、強行突破すべく再度剣を構えた瞬間……不意に腕を引っ張られ、彼女を追いすがる雑兵には蛮刀が振り下ろされた。
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