秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる


「……っう」


一度、目から溢れてしまった涙は、なかなか止まってはくれない。

さっきからずっと胸が苦しくて、張り裂けそうになる。


……ねぇ、翔也。


私は、翔也にとって何なの?


翔也のことが、たまに分からなくなるときがある。


翔也が一体何を考えているのか、私のことを正直どう思っているのか。


いつも二人きりで会うとき、翔也は私に『好き』だと言ってくれるけど。


今日みたいなことがあると、それは本当なのかと、好きって口先だけで言ってるのではないのかと疑ってしまいそうになる。


自分の好きな人と付き合えるのならそれで良いと、翔也の望むとおりに今日まで秘密の関係を続けてきたけれど。


ずっと繋いでいた手を、木村さんたちの前でいとも簡単に振りほどかれて。

『付き合ってない』とハッキリ言われたことが、泣きたくなるくらいにショックで。


今日みたいなことがある度に、傷つくのは嫌だ。


もしかしたら私自身、ずっとこのまま彼と秘密の関係を続けていくことに、そろそろ限界を感じているのかもしれない。


私は軒下で一人、ザーザーと降り続ける雨を見つめていた──。

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