出戻り令嬢は、初恋執事に愛されたい。
別れと再会



「よくお似合いですよ、結琉さま」

「ありがとう」


 あの日の翌日、私は幸せの朝を迎えたはずだった。
 好きな人に処女を捧げられて、彼も好きだって言ってもらえて、これからお父様に勘当してもらって千隼と生きていこうと思って眠りについたのだから……なのに翌朝、千隼はいなくなっていた。


【必ず、迎えにいく】
 そんな置き手紙を置いていなくなった。


 迎えにいくって……私は、お見合いしなくてはいけないのにと思ったけどこれは別れ文句なのではと考えに辿り着いた。きっと、私のような好意がありほとんど箱入り娘なら騙せるって思ったのだと思う。

 そして今日はお見合い当日だ。
 からし色で古典柄の振袖を着ている。これは先方からの贈り物だとお母様から渡されたものだ。きっと、津崎さんは大事にしてくれると思う。パーティーでお会いした時もとても優しくしてくださったしこんな素敵な振袖も送ってくださったのだから。

 ……今日で、千隼のことは忘れよう。
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