最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
 車の中ではなんだか遠足気分な紫苑くんがとってもはしゃいでいて、杏くんが呆れながら注意する。

「紫苑、そんなにはしゃいでいると昼までもたねぇぞ? ちょっと落ち着け」
「ええー? だってたのしいんだもん!」

 それでも紫苑くんはワクワクがおさえられないのか、座ったまま上半身で何かのリズムを取ってる。

「ふふっ、紫苑さま今日を楽しみに一週間幼稚園頑張っていましたものね」

 玲菜さんの言う通り、この一週間紫苑くんは頑張って幼稚園に行っていた。
 私と一緒にいる! と泣いていたのがウソみたいに。
 それくらい頑張ったんだもん、はしゃいじゃうのは仕方ないよね。

「うん! ののねーちゃんといっしょはあんしんだもん! ばんぱーだから!」
「ばん……ああ、バンパーですね。はい、望乃ちゃんは紫苑さまを守ってくれるんですよね」

 紫苑くんの意味不明とも言える言葉に玲菜さんはすぐに納得の声を上げる。
 実は紫苑くん、『ばんぱー』と言っているけれど本当は『ヴァンパイア』と言ったつもりらしい。

 ちゃんと覚えていないのと、上手く発音出来ないのとで『ばんぱー』になったみたい。

 そして初めは何を言っているのか分からなかった玲菜さんだけれど、杏くんが機転(きてん)()かせてくれたらしい。
 紫苑くんが木から落ちたところを私が助けた話を聞いて、車の衝撃(しょうげき)を吸収するバンパーみたいだなって言ったからそれを覚えちゃったのかもしれないって。
 ちょっと無理やりな気もするけれど、玲菜さんは杏くんの奇妙(きみょう)な例えを特に不審(ふしん)には思わず納得したみたい。
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