星が代わりに泣いてくれるから



欲しかったんだけどな、子ども。

子どものころは当たり前に、結婚をして子どもを授かってという未来を描いていた。
私は二人、もしくは三人授かりたかった。自分は一人っ子で、兄妹が羨ましかった。


夫はこどもはいてもいなくてもいい、というわりに絶対に避妊を行った。ゴムの買い忘れがあったとき絶対にしない。まだいいかな、と思って。


そうやんわり断る困り果てた笑顔に同じように笑顔を向けて、とうとうセックスレスである。

今では一か月に一回あるかないかである。
いつも私からお伺いをたてて、向こうしだいなのだ。

ブー、ブーと携帯電話が鳴る。着信相手はミクちゃんだった。高校生の時の友達でこうしてよく電話をかけてくることがある。


「ハイ」
「やっほー、久しぶり」



声はいつも通りことさらに明るい。


「ね、久しぶり元気してた?」
「してたしてた。ねえ、聞いてよ旦那不倫しててさ」


不倫。


「そ、そうなんだ」


いつものテンションとなんら変わらないからこちらが狼狽えてしまった。
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