クリスマスなんて大嫌い! ~黒鼻のトナカイ~
『このオモチャをサンタに頼むの?』
急に声をかけられて怯えた私は、お母さんの背中に隠れて頷いた。
『はい』
綺麗な雪が舞っていたガラス玉のオモチャを差し出した男の子。
私はなぜか受け取ることができなかった。
そんな私と男の子を見て、お母さんが男の子に声をかけた。
『これはボクがサンタさんにお願いするんでしょ?』
男の子は一瞬目を丸くした後、笑顔で言った。
『いいんだ、僕は他のサンタさんにお願いするから!』
男の子がお母さんにオモチャを手渡したと同時に、遠くから他の男の子の声が聞こえてきた。
『おい、おいて帰るぞ』
『待ってよ、お兄ちゃん!』
走り去っていく男の子の後ろ姿を、私はお母さんの背中に隠れながら見ていた。