あの子、溺愛されてるらしい。
私の気持ちを考えてくれて、自分が悪くなくてもいつも謝ってくれて。すごく優しい人だ。



「会うたび私に謝ってますね…。だから私は中條さんにお礼を言います。」

「お礼？」

「いつも私のこと気にしてくれてありがとうございます。でも大丈夫です。私、気にしてませんから。」



中條さんも私のように嫌な思いをしているはず。それなのに自分のことだけでなく私のことも気にするなんて大変だ。彼に少しでも楽に過ごしてほしかった。



「気にしてないはずない。…無理するな。」



それだけ言って中條さんは売店を出て行ってしまった。


その背中を見送って、手の中のオレンジジュースに目を落とす。


もしまた会えたら今度は私が飲み物でも渡したい。そして私から先に気遣う言葉をかけてあげたい。


そう思った。



「ねえ。中條先輩ってなんであんなに梨央のこと心配するんだろう。」



隣で会話を聞いていた乃々佳が首を傾げた。



「優しいんだよ。」

「うーん。それだけかな…。もっと怖い人だって聞いてたのに梨央には言い方も優しいし。」

「噂とは違うんじゃない？ほら、私と中條さんの噂もデタラメでしょ。」

「…それは確かにそうだけど。」



考え込んでいる乃々佳を連れて私も売店を出た。


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