あの子、溺愛されてるらしい。
「ちょっといいか?」



少し前に立っていた中條さんがコンビニの隣の小さな公園を指差しながらそう言った。それに私も頷く。


公園の小さなベンチの端と端に座ってしばらく無言のまま時間が流れた。


その沈黙を破るように中條さんがプシュッと炭酸水の蓋を開ける音を鳴らした。それを一口飲んで彼がやっと口を開いた。



「なんで俺が謝るか、言いたくて。」

「…?どういう意味ですか?」



中條さんが言おうとしていることがわからなくて私は首を傾げた。



「知らないことがあるはず。」

「私が、ですか…?」



頷いた彼が私の方に視線を向けた。



「あの噂は俺のせいなんだ。」

「え…。」

「俺がぐずぐずしてたからあんなことになった。」



ぐずぐずしてたから?どういうこと?でも中條さんも噂の原因は知らないはずだ。



「中條さんのせいではないですよ。何が理由でもあんなデマを流した人が悪いんです。」

「いや、俺が原因だ。」

「どうして…?」



中條さんがとても真剣な顔で自分が原因だと言うから何かそう思う理由があるのだと思った。だからそれを聞いてみたかった。


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