完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
「高峰、今からタクシーを呼ぶから、帰りはタクシーで帰ってくれ。自宅は医院とは別なんだろ?」
「それじゃ送ってきた意味ないです!」
「いいから、っ」

 部長は驚いた顔をした。と思ったら、突然私を抱きしめた。

「な、何してっ」
「しっ……!」

 部長が私を抱きしめながら耳元で息を吐く。
 胸はバクンバクンとうるさいし、その吐息に思わず、ひゃっ、と変な声が出た。
 部長は低い声で呟く。

「……いる」
「へ?」
「さっき言ってた例の彼女」

「え! こんな深夜に⁉ それもうストーカーじゃないですか!」

 思わず振り向く。確かにマンションエントランスの植え込みの影に、パンツスーツの女性が一人で立っている。

「とにかく、恋人のふりをしてくれ。彼女がいると思わせて諦めさせたい。しかもそれができるのは君一人だ。お願いできないか」
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