完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!

「芽衣」

 突然名前を呼ばれて目を白黒させた。目の前にはその部長。そうだ、今は引越し途中だった。
 っていうか、今、名前で呼んだ?

「え? な、名前?」
「高峰はおかしいだろ。結婚前提で同棲してる恋人なんだから」
「フリ、ですけどね」
「別にフリだけでなくていいけどな。このまま結婚してくれるなら俺は嬉しい」

 ドキッとするのでそういうことを言うのはやめてほしい。フリだけでも私のような男性慣れしてない人間には心臓に悪い。

「あの父に、あんな啖呵を切ったんだから、結婚しても問題なくやっていけるさ」
「啖呵じゃないですし。そんなかわいげのない嫁、絶対嫌でしょう」
「そうか? 父は嫌いじゃなかったと思うけどね。だからこうして同棲をさせて様子を見ようとしてるわけだし」

 嘘だ。社長、すっごい不機嫌な顔してましたよ?
 もう絶対首になると覚悟したけど、奇跡的に首にはならなかった。
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