ジュヴナイルの愛憎
「何言ってるの。体が弱いのは絹のせいじゃないでしょ」

そう言うと、相変わらず儚げで美しい笑みを浮かべる絹。

その笑顔に反感を持つ者は誰も居ない。

笑顔ひとつで、誰もが全てを許してしまう魔力のようなものがある。

私もその一人だが、いつからか、心の片隅では自分と違い、誰からも愛される絹への烈しい憎悪が芽生えていた。

しかし、私はその真実から目を背け続けている。

たった一人の弟なのだから、当然愛しているが、それと同じぐらい…もしくは、それ以上の憎しみを感じているなんて、誰にも言えるはずもない。
< 14 / 26 >

この作品をシェア

pagetop