リグレット・レター
大学を卒業して、お互い仕事が落ち着いた後に、一緒に暮らすようになりました。色んなことを話しながらご飯を食べたり、テレビを見たり、一緒に買い物をして、家族とは過ごせなかった温かい時間を、彼がプレゼントしてくれたんです。

研二くん、ピーマンとにんじんが嫌いなんです。だから、ピーマンの肉詰めとかにんじんしりしりなんかを作ると、嫌そうな顔を一瞬するんですよ。でも、ちゃんと「作ってくれてありがとう」って言いながら食べてくれるんです。

お料理はできない人だったけど、お裁縫はとっても上手で、私の持っているトートバッグに可愛いハリネズミやカワウソ、犬やお花の刺繍をしてくれたりしました。

……やだ、申し訳ありません。長々と惚気てしまって。もう元カレだっていうのに。そうです、病気が健康診断で見つかってから、私は一方的に別れを告げて二人で暮らしていたマンションを飛び出しました。

本当は、彼のことが大好きでした。……過去形じゃないですね。今でも大好きで、できたらそばにいたかった。でも、私がいると研二くんに迷惑がかかるから、彼を振るしか彼を守る方法がなかったんです。もう、あれから七年も経ちました。

床頭台の上に置いた箱、開けてみてください。すごい数でしょ?七年間、研二くんに宛てた手紙です。まあ、一通も出したことはないんですけどね。別れたことが、正しかったのか分からなくて、どうしようもなくなった時に書いてました。
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