キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】

愛の証明書ーside匠真ー

10月中旬。
葵の癌再発が発覚し、再び長い闘病生活が始まった。

ナースステーションにある電子カルテで、入院患者の薬を処方していたときのこと。


「五十嵐先生。ご無沙汰してます」


聞き慣れた声とともにナースステーションの入り口に顔を出したのは、看護師の森脇。

8月31日付で育児休暇に入った彼女が、小さな赤ちゃんを抱っこして現れた。


「あぁ。どうも」

「もう。不愛想なのは変わってませんね」

「……悪いな」


森脇の顔を見ることもなく返事をし、薬の処方を終えると席を立った。

今から葵の点滴交換に行くつもりだ。
というのはほぼ口実で、葵の様子を見に行くのだけれど。

入院中で人の出入りがあるとはいえ、病室では1人。
寂しいに決まっている。

だから、時間があれば頻繁に病室に向かう様にはしていた。

交換用の新しい点滴バッグを準備し、ナースステーションを出ようとしたときだ。


「五十嵐先生、ちょっと」


呼び止めたのは、森脇。

俺と話がしたいのか、誰もいないカンファレンスルームへと引っ張られる。


「少し、五十嵐先生にお話が」

「なんだ。時間があまりないのだが」

「わかってます。でも、矢田ちゃんのことでちょっと」
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