先輩からの挑戦状〜暗号ヲ解読セヨ!〜
「それじゃあ、頑張って解いてね。私は当日、そこで待っているから」

そう言い、紫乃は部屋を出て行く。とんでもない暗号を渡されてしまったと、月斗は数字を見ながらため息を吐いた。

紫乃が使っているシャンプーなのか、花のような香りがふわりと部屋に残っていた。それは先程まで、ここに月斗が片想いをしている紫乃がいた証拠で、月斗はボウッとしてしまう。

「桜木先輩……」

思えば、初めて会った時も花のような香りがしたなと月斗は懐かしさを覚え、紫乃との思い出を頭の中に浮かべる。



月斗は元々、読書が好きで執筆に興味があるというわけではなかった。むしろ真逆で、活字を読むとすぐに眠たくなり、夏休みに書く読書感想文を小説ではなく漫画で書いて再提出をさせられたような人間である。

そんな月斗の運命が大きく変わったのは、高校の入学式である。入学式に遅れそうになっていた月斗は走っている途中で転んでしまい、膝を擦り付いてしまった月斗を保健室まで連れて行ってくれたのが紫乃である。その時から、月斗は紫乃に恋をしていた。

好きな人に少しでも近付きたい、そんな思いから月斗は紫乃が所属する文芸部へと入部したのだ。
< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop