愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
第四章 最愛の抱擁と読みとれない心
一時間半程度食事をして、新作の試食会と銘打った合コンはお開きになった。

私は十倉さんと、美波は三津屋さんと連絡先を交換して別れた。

「美波は満足そうだったけど、真誉にとってはちょーっと相手が物足りなかったかしらねえ」

後片付けをしながら、私と優多さんは今日の感想を口にする。

「優しくて素敵な方たちだったなあとは思うよ。でも……」

お付き合いしたいかと言われると、よくわからない。

私の心中を見透かして、優多さんが苦笑する。

「サラリーマン同士で落ち合うと、どうしても仕事の愚痴合戦になっちゃうのよねえ。私も経営学部の友人たちと飲みに行くけど、感覚が違うなって思うもの」

私たちは自分で仕事を作り出し、主体的に働いている。雇われている彼らと温度差が生まれるのは仕方がないのかもしれない。

「愚痴が悪いとは言わないわ。日々の些細なストレスを発散して、すっきりした気持ちで明日に臨めるなら、それでもいいと思う。私だって落ち込むときはあるし」

「とはいえ、真誉の周りには理想の高い人たちがいるでしょ? それと比べちゃうとねえ」

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