敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
第六章 裁量労働制はオフとの区別がつきにくいです
 月曜日はなにかと慌ただしく、一週間出張で不在だった篠田部長が今日は出社しているので、先週の玩具業界の交流パーティーの報告なども飛び交う。

 今朝 、隼人さんとは表面的な会話しかできず、仕事としてはこれが正しいと思う一方で、言い知れない寂しさを感じてしまう。けれど隼人さんも余計な話は一切してこなかったので、これでいいんだ。そう言い聞かせる。

 逆に今日から隼人さんは出張で、帰ってくるのは四日後だ。彼がいない間も家のことはちゃんとして、とにかく仕事はしっかりしないと。

 そして隼人さんが戻ってきたら、仕事相手として適度な距離感を保って接しよう。

 意を決し、今は仕事に集中する。

 パーティーで橋本さんや木下さんと会ったのもあり、木下さんはともかく橋本さんがなにか私と隼人さんとの結婚について面白おかしく言いふらされるのでは、と懸念もあったがそんな雰囲気はなく、橋本さんのプライドの問題なのか、どうやら自意識過剰だったらしい。

「ねぇ、橋本さん。篠田部長に呼び出されているらしいけど、どうしたの?」

「なんか、交流会でのプレゼンの出来が最悪だったんだって。資料はよかったけれど、取引先の名前を間違えたり、言わないとならない説明を飛ばしたりで、先方からの指摘もあって散々だったらしいよ」

 仕事をしていると、うしろのデスクでコソコソと話している女性社員の話がふと耳に入る。そういえば朝から橋本さんの姿が見えない。

「橋本さん、ほとんど資料の作成に携わっていないのに、代表者みたいな顔して発表者に立候補していたもん」

「あれ、ほとんど沢渡さんに押しつけていたよね」
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