敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 改めてサイズの調整された真っ新の指輪は、私の左手の薬指にぴったりと収まる。お店で見たときよりもずっと綺麗で輝いている。

「ありがとうございます。大事にします」

 そこで私は隼人さんに伝えそびれていたことを思い出す。

「あの、このブランドを選んだのは映画の影響ってお話しましたけれど、指輪自体はあの場でぱっと目を引いて、私自身の好みで決めたんです……」

 適当だったわけでも投げやりだったわけでもない。それをわかってほしくて必死に説明する私に隼人さんは微笑んだ。

「未希が気に入っているなら、よかった」

 頭を撫でられ、彼の笑顔に胸が高鳴る。

「映画は今度改めてちゃんと観よう」

 ふと真面目な顔で提案する隼人さんに目をぱちくりさせる。

「でも隼人さん、観たことあったんでしょう?」

「未希と観たいんだ」

 無理をしなくても、と続けようとしたが彼はきっぱりと言いきった。彼の想いに笑みがこぼれる。

「ありがとうございます」 

 嬉しくてお礼を告げたらどういうわけか隼人さんの表情がかすかに渋くなった。

「そのときは誘惑に負けないようにする」

「誘惑って……」

 まるで私に原因があるみたいな言い方だけれど、あのとき映画どころではなくなったのはどう考えても隼人さんのせいだと思う。

 唇を尖らせる私に、隼人さんは軽く噴き出した。

「こんなふうに誰かと過ごす未来が楽しみになるとは思わなかったな」

『誰かと人生を共にする気になれない』
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