失恋百回記念日
美咲がそう答えると、凌に不意に手を掴まれる。美咲が驚いて凌の顔を見れば、彼の顔は真っ赤になっていた。凌は酔っても顔が赤くなるタイプではなく、アルコールのせいではないということだけはわかる。

「もうやめにしない?お見合い」

「やめたら結婚できないじゃん」

普段、凌はこんなことを言わない。いつだって「次はいい奴に会えるって!」と応援してくれていた。こんなことは初めてで、美咲はますます戸惑ってしまう。

「好きだ」

はっきりと凌は口にした。綺麗とは到底言えない居酒屋で、何のロマンもない告白である。ドラマや映画のワンシーンのような感動はどこにもない。それでも、凌は真っ直ぐ美咲を見つめて言う。

「ずっと好きなんだ。お見合いするって言われて気持ちを諦めようと思ったけど、もう我慢しない。俺を見てほしい。俺と結婚してほしい。共働きでもいいし、美咲が望むなら俺が専業主夫になる。牛丼とか豚カツ一緒に食べたいし、一緒に乗る車だって選びたい。どうかな?」

美咲の空っぽだった心が騒つく。一瞬にして美咲の顔も赤くなった。だが、それはアルコールのせいではないと自分がよくわかっている。

百回目の振られた日は、美咲にとって特別な日になってしまった。





完結
< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:9

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

浅葱と萌葱の検死報告〜ラスト・ドレスを纏ったシンデレラ〜

総文字数/11,237

ミステリー・サスペンス26ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
人はいつか死を迎える。 事故死、病死、老衰。そして殺人。 様々な理由で人は命を落とす。そして、その死について調べる職業も存在する。 遺骨の身元や死因を特定するのが、法人類学者の仕事だ。 ※本作はフィクションです。実際の事件や団体には関係ありません。主人公と準主人公が英語を話している時は、敬語表記となっています。
劣等生と光の花束〜ある魔女の秘密〜

総文字数/165,904

ファンタジー365ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ずっと、自分の居場所なんてないと思ってた
恐怖探偵団と魔法の世界

総文字数/23,912

ホラー・オカルト56ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
魔法の世界。そんなものがあるなんて、知らなかった。でもそんな世界にも、裏の顔がある。 「私は諦めないわ。だって、こんなところで終わりたくないもの」 私も、諦めたりなんかしない。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop