弁護士は相談料として愛を請求する

 否定しないのか。ま、そうだよね。

 私は保育学科だったし、男の子なんて同じクラスに二人いればいい方だった。まあ、男性が苦手だからそれは願ったり叶ったりでしたけれども。

「どこに行くの?私、そろそろ帰るよ。のんはひとり暮らしになったんでしょ?」

「お前、今日は俺と過ごすって言ってあるのか?」

「あ、うん。ママには言ってきたよ。久しぶりにのんと飲むんだって言ったら、よろしく言ってねと言われた。あ、そうだ。クッキー預かってたんだ。ママが作ってるいつものやつだけど……のんにもお裾分けだってさ」

 ごそごそとバックを探っていたら、のんが急に止まった。すると目の前にタクシーがいて、ドアが開いた。

「乗れ」

「え?どうして?」

「俺んちに行く」

「はあ?」

 タクシーに押し込められ、彼が後ろから入ってきた。扉が閉まり、行き先を運転手に告げるのん。あっという間に発車してしまった。
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