弁護士は相談料として愛を請求する

「うん。ありがと。さすが、のん」

 また、前を向いて窓ガラスに張り付いて外を見ていたら、後ろからふわっとのんのつけている香りに包まれた。首回りに彼の腕があった。

「すず」

「なあに?」

「お前、その合コンの男はどうして追いかけてこなかったと思う?手加減してくれたんだということに何故気づかない」

「……」

 確かにそう言われてみればそうだったかもしれない。

「お前を紹介したその男の友人がお前と保育士仲間だから、お前に蹴られても我慢して解放してくれたんだろう。そうじゃなかったら、力ずくで連れ込まれていた可能性が高い。逃げられたのは理由があるんだよ」
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