弁護士は相談料として愛を請求する

忘れる決心

 
 異動になる前日の日曜日。

 急にのんから電話が来た。出るか、どうしようか迷ったが、のんの声が聞きたいという誘惑に負けてしまった。

「すず、お前どうして異動すること黙ってた?」

「急だったので、しょうがないの。あ、私がいなくなってもそっちの問題はきちんと弁護士として仕事しなさいね」

「……なんだ、その上から目線な物言いは」

「この間はありがとう。私、しっかりする。新しいところに移ったら無理なことは無理と言って、のんに頼らず生きていきます」

「は?何言ってんだお前?熱でもあんのか?」

「別に。あ、そうだ。涼君も病院変わるかもしれないって聞いてたけどどうなったか知ってる?」

「ああ、来月から千葉の病院に移るらしい。俺もさみしいよ」
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