不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

お飾りの妻でも



 桜花組の妻となり、まず驚いたことといえば。


(あね)さん!今日から我ら一同、誠心誠意姐さんにお仕えする所存。よろしくお願いしやす!!」

「まあ」


 たくさんの強面組員たちが一斉に頭を深々と下げてきたこと。
 これぞヤクザと言わんばかりの人たちがみんな私に向かって頭を下げている。

 正に映画の中の世界だわ……!


「姐さんって私のことですよね?」

「もちろん!兄貴の奥方ですから!」


 奥方だって。私って本当に極妻になったのね。


「こちらこそ不束者ですが、よろしくお願いします」


 深々頭を下げると、みんな慌て出した。


「やめてくだせえよ姐さん!俺たちに頭下げるなんて!」

「でも、これからお世話になりますし」

「敬語もいりやせん!俺たち兄貴から、姐さんのこと任されてるんです。姐さんのことは、俺たちがお守りします!」


 えっ……、和仁さんが?


「姐さんにはご不便かけやせんから!」


 その言葉通り、本当に良くしてもらえた。
 まず驚いたことは、家事は組員たちで当番制だったこと。料理、洗濯、掃除などなど分担して真面目にこなしていた。
 桜花組は住み込みの組員が過半数だから、みんなで家事をやっているのだそう。


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