静穏総長も、時には激しく愛したい
「なんだよ、いぶ子って」

「もし生吹が女装したら、そう呼ぼうと思って♪」



楽しそうに言う純弥に「誰が」と生吹。



「真白には何も警戒してない。美月が心から楽しそうにしてるのが、何よりの証拠だ」

「……そっか。それが聞けて嬉しいよ」



目を伏せた純弥に、生吹は今度こそ踵を返し、歩き出す。

その背中に、純弥がチラリと視線を送った。



「三年間、総長お疲れ様。生吹。

俺の族をお前に託して、何も後悔はない。お前が総長で良かったって、ずっと思ってた。今度も心配いらないだろうね。あの日の夜野くんを見ればさ。

だから生吹、安心して次の総長に席を譲ればいいさ」



すると、声は聞こえなかったはずなのに、生吹は純弥を見ないまま手を上げる。

その様子を「わー、地獄耳」と。ニコニコしながら、純弥は見つめたのだった。




end


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