冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「結婚の事情がどうあれ菅井姓になったからには紹介しろと、うるさくせっつかれてね。今回かぎりにするから許してほしい」

 心底申し訳なさそうに彼は首をすくめた。

「いえ、ごもっともな意見だと思います。せめてあいさつくらいきちんとできるようがんばります!」

 蛍が明るく返すと、左京にも笑みが戻った。

「そういえば、指輪もよく似合ってる。つけてくれてありがとう」

 左京からもらった指輪は左手の薬指でキラキラと輝いている。この華やかかつ上品なジュエリーのおかげで、そう高級でもないワンピースまで格上げされているように思えた。

 ハンドルを握る左京の手元に蛍は目を走らせる。

(結婚指輪代わりなら左京さんも……そう思うのはさすがに図々しいかな)

 左京の未来まで欲しがるのは強欲すぎる。だけど、もし蛍が指輪を贈ったら彼はどんな顔をするだろうか。

 自戒の念と期待が同じ重さでせめぎ合う。

「わ。これは本当に……」

 組長の家のようだ、という言葉はさすがに自重したが左京は察したようだ。

「な、それっぽいだろ」
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