冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
三章 不本意ながらエリート警視正の妻になりました
三章 不本意ながらエリート警視正の妻になりました


 奇妙な同居生活をスタートさせて二週間。もとのマンションから必要なものを持ち出すときには、左京ともうひとり屈強なボディガードがつき厳戒態勢だった。

 会社への行き帰りは菅井家の運転手による送迎、ひとりでの外出は原則禁止。

(守られているというより、監視されているといったほうが正確ね。窮屈だけど仕方ないか)

 赤霧会に知られてしまったからという理由で長く暮らしていたマンションは解約させられたので、蛍の帰る場所は左京と暮らすこのマンションだけになった。

「俺たちの結婚の裏事情を知るのは海堂家、菅井家、それと警察庁での俺の上司だ。赤霧会も含め、それ以外の人間にはごく普通の見合い結婚と説明してある」

 彼の周囲、つまり警察官僚の間では治郎に隠し子である娘がいることは周知の事実であるようだ。さらに蛍は知らなかったが、海堂家と菅井家には以前から浅からぬ付き合いがあったようで、ふたりの結婚はさほど驚かれるようなものでもないらしい。

 左京が貧乏くじを引いて、厄介な存在である蛍を引き受けた。そんなふうに思われているのだろう。

「霞が関じゃ、俺が出世に目がくらんで結婚を決めたと大騒ぎだ」
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