スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
 美人といえば奈央子みたいに大きな瞳をくりくりさせて華やかな笑顔を振りまく女性を想像する私だが、切れ長の目は涼やかで、どちらかというと大和撫子という言葉が似合う彼女のこともまた、きれいだなと感心してしまう。
 ……いや、感心している場合ではない。
「貴博、こちら藤宮(ふじみや)(れい)さん」
 文乃さんが真っ先に紹介したけれど、彼は聞いちゃいなかった。
「やっぱりそういうことだよな」
 その呟きはつまり「やっぱりお見合いを仕込んだんだな」ということだろう。相手が何か言い出す前に、貴博さんははっきりと告げた。
「お母さん、前にも話した通り俺は深雪と結婚するから」
 彼の意志の強さは頼もしいけれど、こんなふうにケンカ腰で宣言して話し合いになるのかと、心の内では不安が勝る。
「……とりあえず、座ったら? 麗さんを立たせてしまったことだし」
 文乃さんの提案はもっともで、不穏な空気を感じながらも各々が席に着く。招かれざる客の私はどうしたものかと立ち尽くしていたが、貴博さんが問答無用で隣に座らせてくれた。
 しかしこうなると、仲人の文乃さんも篠目家の人間だから、麗さんこそアウェーに見える。そこへ貴博さんが容赦なく追い打ちをかけた。
「その女に用はないんだけど」
< 114 / 204 >

この作品をシェア

pagetop