スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
 ただ、私は練習で積み重ねたものを大事にしたいのだ。だから本番でいきなりアドリブを放り込むようなやり方は好きではない。
「練習通りに本番を迎えられたら、それが一番だとは思っているかな」
「ほら。貴博さんも気を付けてください。舞台に立ったら演出は絶対ですからね」
「へえ」
 彼の笑顔はどちらかというとニコニコではなくニヤニヤだったけれど、目の前の二人は私が求めていた構図に近かった。この会で二人の距離が縮まったのなら、それは喜ばしいことだろう。
 隣り合う二人の姿に私が悶々とするなんて、そんなのきっと間違っている。
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