スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「勇也さんこそ、これで貴博さんくらいイケメンだったら完全に女の敵ですよ」
「それ、俺と同時に貴博くんのことも叩き切ってるけどいいの?」
「へ?」
 指摘されてハッとした。演劇論を語ったせいか、随分と身内のノリを晒してしまっている。
「あの、今のは……なんというか」
「別にいいけど」
 随分と皮肉の利いた態度が返ってきた。別にいい、なんて全く思っていなさそうな。
「深雪が俺のこと、顔だけ男だと認識してるのは分かってるから」
「いや、でも」
 そんなことはない。と、伝えることができないまま、彼の方が会話を切り上げた。
「変なこと聞いて悪かったな。脚本の疑問は、ちゃんと解決できたから」
 ぴしゃりと告げられると、もう引き留めることはできなかった。私たちはあくまで舞台について語っていたのだから。
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