狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


 征雅は小さい頃、討伐依頼から凱旋する萩恒(はぎつね)家の戦士達を、往来で何度も見かけた。
 狐火を操り、真正面から敵を打ち倒すその姿も、何度も見た。

 そして、それを褒め称える人々の姿を、憎々しく思っていた。

「そんな顔をするでない、征雅」
「兄上、でも!」
「奴らが褒め称えられたことで、我らの功績が消える訳ではない」
「でも、兄上達だって、今回は頑張ったんだ! 龍美家が癒さなければ、狐だってあの妖怪を打ち取ることはできなかった!」
「……そうだな」

 そう言って、哀しそうに微笑む兄に、征雅はさらに、萩恒家への憎しみを増した。

 そしてある日、機会が訪れた。

『狐が、居なくなれば好いのです』

 (そそのか)してきた者も信用ならぬ奴、しかし提案内容は悪くない。
 そうして、征雅は望む結果を手に入れるはずだった。

 だと言うのに。


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