狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


 その稲も、ほどなくして腰を悪くし、息子の家に引き取られていった。
 そうして、だんだんと、萩恒家の使用人達は数を減らしていく。

 けれども、幼く可愛い主人に、さぎりはいつも笑顔だった。
 たまに屋敷の中に現れる子狐も、さぎりによく懐いてくれている。

 幸いなことに、希海に直接関わることのない仕事についていた使用人達は、おおよそが残ってくれている。
 だから、屋敷の中はいつでも清潔に保たれていたし、希海の食事だって十分に賄われている。
 あと数年もすれば、希海も異能の力を自由に操れるようになるだろう。
 それまで、ほんの少し、さぎりが耐えれば済むことだ。

 けれども、そんなさぎりを、複雑な面持ちで見ている者がいた。

 十八歳にして萩恒家の当主となってしまった、希海の叔父の崇史である。


< 4 / 80 >

この作品をシェア

pagetop