狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
慌てて子狐を抱きしめたところで、腕の中から「きゅん」という鳴き声が聞こえた。息があるようだと安心したところで、ふわりと腕の中から狐火の光が舞う。
炎の中で、子狐が解け、緋色の着物がふわりと翻った。
――そこに現れたのは、希海だ。
さぎりの大切な大切な、七つになったばかりの、幼い主人。
「……そ、んな……」
「けほっ、けほっ」
「……希海様! しっかり、息をしてください! ど、どうして、こんな……」
「――そういうことか」
地から響くようなおどろおどろしい声音に、さぎりが体を震わせて面を上げると、そこには引きつった笑いを浮かべた灰色の瞳の男がいた。
「狐。やはり、萩恒が!」
その瞳に宿る苛烈な炎に、さぎりは希海を抱きしめながら、何故、と思う。
何故、そのように憎むのだろう。
希海が、狐が――萩恒家が、一体何をしたというのだ。
「……あ、貴方は一体、なんなのです」
引き攣る声でそう漏らすと、男はぎろりとさぎりを睨みつける。
「お前こそなんなのだ。狐だけではない。お前も何か隠しているだろう!」
「っ!?」
男がさぎりの着物の首元を掴み、無理やり立ち上がらせたので、さぎりの腕の中にいた希海は床に転がり落ちる。
そうして立ち上がらせたさぎりの着物の衿元に、男が手を伸ばしたものだから、二十歳の乙女であるさぎりは悲鳴を上げた。