狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。

11 【回想】襲撃の日



 水の妖怪の襲撃を受けた四年前のあの日、さぎりは、希海(のぞみ)の母であり、崇史(たかし)の姉である萩恒(はぎつね)美月(みつき)に付きそう侍女(メイド)の一人だった。

 水の妖怪は萩恒家の天敵。
 それが複数、萩恒家の本邸内部に現れたので、皆絶望に震えた。
 それでも、本邸にいる戦士達は皆、異能の力の強い精鋭達だった。だから、それだけならば、あのように全員が全員、命を落とすことはなかったはず。

 なのにあの日、烏のような空を舞う妖魔が幾多にも現れた。
 小さく白い香り袋を首から下げていたそれらが近づいた途端、萩恒家の異能者達は、次々に膝を付いた。そして、水の妖怪を抑えることができなくなり、戦士達は次々に命を落としたのだ。

 この日、外に出ていた戦士達にも同様の奇襲があり、本邸に応援が駆けつけることはなかった。

 そして、本邸で最後まで戦っていたのは美月だ。
 直径の血を引く彼女が、あのとき本邸内に居た異能者の中で最も強かったからだ。

 美月は、自分以外の戦士が居なくなったとき、使用人達に命じた。

< 44 / 80 >

この作品をシェア

pagetop