孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜


「二十年前、白の花嫁は差し出した。しかし、実際には引き渡していない」
「……?」

「いいか。イルマル王国は、危険な魔人を排除するべきだと考えている」

 父はトーンを落とし、ゆっくりと言った。

「……しかし魔人がいなくなれば、魔物の管理が出来ず国民が危険にさらされるのではないでしょうか。暗黒期が恐れられているのも、魔王が制御できなくなるために魔物が暴走すると学びました」

 僕の言葉に父は小さく呆れたような笑みをこぼした。大臣の反応も芳しくなく、自分の答えが不正解だと突きつけられたことを感じる。

「魔人は野蛮な存在だ。暗黒期は人間ををさらう理由づけに魔物をけしかけて襲わせているだけにすぎん。魔人さえ滅ぼしてしまえば魔物と共存はできる」

 私が説明します、と一人の大臣が立ち上がった。魔法省のトップの初老の男性だ。

「魔物は穏やかな気質であることが判明したのです。魔の森の一区で定期的に調査を行っているのですが、彼らから襲ってくることはありません。魔人が魔物を操り攻撃をさせているのでしょう。いうならば魔物も被害者なのです。
魔物は森で管理し結界を張っていれば恐れるものではありません」

「そこで二十年前、私達はこの国の脅威である魔人を排除することに決めた」
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