孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜


 どれくらい眠ってしまったんだろう。陽がのぼらない暗黒期は時間が読めない。壁にかけてある時計を見てみると朝になっていた。

 目の前にはアルト様の顔。まだ眠っているみたいで瞳は閉じられている。彼の手を取ってみると、鉤爪は縮み人間と同じ爪に戻っている。背中にあった羽も見えない。朝になると姿はもとに戻るのかしら。
 牙はどうだろうかと唇を観察しようとして、キスを思い出して身体が熱くなる。

「あれってキス……だったよね」

 そう呟くのとアルト様が目を開けるのは同時だった。

「アルト様! 目覚めたんですね!」
「ここは」
「我が家のダイニングですよ」
「眠っていたか……」

 寝起きで少しぼんやりしているみたいだけど、意識はしっかりある。そして瞳の色は青に戻っていた。

「無事なら良かったです。体調は大丈夫ですか?」
「問題なさそうだ」

 そう言うとアルト様は身体を起こした。私も身体を起こそうとするけど力が入らない。

「お前こそ大丈夫か?」
「うまく力が入らなくて」

 アルト様が背中に手を回して、私を起こしてくれる。肩を抱かれる形になってまた体温が上がってしまう。

「座れそうか?」

「すみません、横になってても大丈夫ですか。座れそうですけど身体がだるくて」
「わかった」

 そう言うとアルト様は私を軽々と抱き上げて、ダイニングを出ていく。
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