孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 目が合うともう一度キスをされる。触れるだけなのに驚くほど熱い。アルト様は私の手首にもキスをしてから、もう一度唇にキスをした。
 頭の後ろに手が回り引き寄せられる。私の頬が熱い肌に到着したから「ああそうだ、ニットを着せてあげなくちゃ」と思い出すけれど、大きな手で髪の毛をかき混ぜられるから何も考えられなくなってしまう。

 真上を見上げると、金色の眼差しが優しく降り注いでいて溺れそうになる。
 魔力を私からも渡そう。アルト様の頬に両手を当てて引き寄せると、自分からキスをした。小さく触れてすぐ離れようと思ったのに手首はがっちりと固定されていて抜け出せない。息を吸おうと離れてもすぐに次の口づけがやってきて、開いた唇に差し込まれる熱がある。頭はぼうっとしてきて対応するのに必死になるたけだ。

 本格的に苦しくなってきて胸を軽く叩くと、見下ろす瞳が青に戻ったところだった。

「……す、すまない」

 アルト様はハッとしたように謝ると、私を膝の上からおろして隣に座らせた。

「ふふ……!」
「何がおかしい」
「だってさっきまで余裕の表情で微笑みながら私に迫ってきてたのに! 可愛いアルト様に戻ってるんですもの!」
「『夜』の俺は気が大きくなるみたいだ」

 さっきまであんなに自信満々に微笑んで射抜くような瞳で情熱的に見つめてきたというのに。今はむくれた顔をそらすのが精一杯なのが愛しい。
 気持ちを確かめ合えば全ての言動が、私を好きだと言っているように見えてしまう。

「体調はどうだ?」
「大丈夫ですよ。やっぱり身体が慣れてきたんでしょうか?」
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