孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

「しかし彼らも警戒しているでしょう。リイラ・カタイストを見殺しにして、出てこない可能性もありますね」
「まあそうなったらそうなったです。我らは国民のために魔人を滅ぼす大義名分もありますから、軍で突入することになるでしょう」
「先日と同様に子供を数名一区に放つ予定です。先日の魔人からの文には、魔物が子供を襲ったことへの謝罪も含まれていましたから。彼らは、魔人と人間と争いを回避しようとしている。子供を助けるために一区には出てくるはずです」
「今まで最奥にいたから手は出せなかったが一区まで出てくれば話は変わるな」

 重鎮たちが話しているのを国王は静かに聞いた後、熱っぽい表情で切り出した。

「人間と魔人の大きな戦になるかもしれない。だが今しかない。今を逃せばいつまでも魔人や魔物に怯える事になる。今回多少の犠牲は出してでも必ず滅ぼす。最後のチャンスだ。魔人を滅ぼし魔物を管理し、国を守る」

 重鎮たちが深く頷いたことを確認すると「各自、最後の準備に取り掛かるように」と指示を出した。
 皆が部屋から退席するなかで、国王は宰相に尋ねた。

「マティアスは体調不良だと聞いているが、どうしたのだ」
「暗黒期に入ってからあまりお身体がすぐれないようでして。学園も休んで療養されています」
「一大事に困ったものだ。あいつは身体だけでなく性根も軟弱だ。後継者を考え直さねばならんな」
「ヴェーティ様に?」
「以前から考えているひとつの案だ。マティアスは厳しさが足りんからな」
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