孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「あとマティアス様はもう国王よ」
「ああそうだった。忙しいんじゃなかったの?」

 ショコラがマティアス様を見る。そこには料理を並べるリイラをかいがしく手助けしているマティアス様がいる。
 王都の城とこの城を数ヶ月ぶりに繋いで、忙しいマティアス様も一応誘っていたのだ。参加できるかわからないと言われていたがちゃっかり準備段階から参加している。

「あれは牽制よ」
「なるほど」
「ここにいる男たちはみんなリイラのことが気になってるのよ」

 もうマティアスエンドを迎えているわけだし、誰がお妃様を奪うというのだろう。おかしくて笑ってしまう。

「まあそれはアルトにも言えることだけどね」
 ショコラがいたずらな表情をして「え?」と聞き返すとショコラはもうひとついちごを取って口に放り込むと、器用に犬の姿に変わりその場を立ち去っていった。

「もう」
 新しいいちごを乗せて最後の仕上げに粉砂糖を振る。さらさらの粉が舞うと雪のようでますます可愛いケーキに仕上がった。

「美味しそうですね! ――お久しぶりです」

 ケーキを見て笑みをこぼすのは……ああ、以前も私に話しかけてくれた煮物好きな元臨時魔法士さんだ。

「甘いものお好きですか?」
「はい! でも今日もご馳走ばかりで最高です」
「たくさん食べてくださいね」
「もちろんです!」

 白い歯を見せて彼は笑うと完成したケーキを持ち上げるとテーブルの方に運んでくれた。
 それを見送ってから他のケーキにも粉砂糖をふりかけていく。

「よし、これで全部完成!」
「これを運べばいいのか?」
「あ、アルト様! はい。あっちの大きなテーブルにお願いします!」
< 225 / 231 >

この作品をシェア

pagetop