孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

「お告げを受けたのは私だからですよ。暗黒期が訪れること、私が花嫁だということ、それからあなたの名前も夢の中で知りました」

 私の言葉にアルト様は何やら考え込んでから

「国も、今回のことは知っているんだな?」

「え、ええ。そうです」

 白の花嫁はイルマル王国からの生贄だというのに、不思議なことを聞く。アルト様の質問の意味を考えている内に次の質問があった。

「お前は白の花嫁が何かわかっているのか」

「はい。あなたの花嫁になることです」

「簡単に言うとそうだ。暗黒期といえば聞こえはいいが、あんなものはただの繁殖期だ」

 暗黒期も別に聞こえはよくないだろう、と思ったけど頷いた。

「本能的に子を残そうと、人間を求めて心が制御できなくなる。
 俺は子孫を残す気がない。だから花嫁はいらん」

「なるほど」

「だが、暗黒期になると心の制御ができなくなるのは本当だ。魔物の制御もできなくなる。それは人間に大きな被害を持たらすし、人間の住処に迷い込んだ魔物も無事では済まない。俺は人間と魔物の争いを求めてはいない。ならばお前の力を借りるしかない」

 アルト様は素っ気なく言ったが、やはりこの人は優しい人だ。
 ゲームでのアルト様も花嫁を求めすぎておかしくくなっていたけど、人間と魔物の争いは求めていない。だから人気投票ナンバーワン男なのだ。
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