孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 どうして出られないんですか、とは聞けない雰囲気があった。きっとこれも触れられたくない部分に違いなかった。

「ショコラと一緒にお前も街にでてもいいが……いや、国に殺される危険も考えてやめておいた方がいい」

 国に殺される。物騒な話だけど、私は国のえげつなさを知っている。生贄として利用価値がまだあるから殺されることはないにしても足くらいは折られるかもしれないし、誤って殺される可能性は大いになる。

「わかりました」

「アイノ、本当にいいの? 第三区内では自由と言ってもこの屋敷と森がもう少し奥まで続くくらいよ。正直あまり楽しい暮らしにはならないわ」

 人間の姿のまま紅茶を飲んでいたショコラが私を見上げる。ショコラが私のことを心から心配してくれているのはわかる。

「問題ないわ。実家でも屋敷から出ることは許されなかったし、物置から出られない日もあったんだから。引きこもりのプロよ」

「プロ……?」

「つまり完全スローライフ、大歓迎です!」

「ふん」

「あ、でも一つ聞きたいんですけど。どうして森はこんなに暗いんですか? この生活で唯一不満にな点はそれです。できれば日光に当たりたいんですけど」

 こんなにずっと夜の生活のままだと、完全体になった私でも気持ちがへこたれる日が出てきそうだ。

「はあ」

「魔人は暗いところじゃないと力を発揮できないとか?」

「違う」
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