孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「空間を切り刻む攻撃魔法だ。魔力の低さと呪文の理解度の低さでなんとかなったな」

「攻撃魔法って危険ですね……自己流ではなく魔法学園で学ぶ意味がわかりました」

「今後、料理には攻撃魔法を使うな」

「ごめんなさい」

 木っ端みじんになっていたのは人参ではなく自分だったかもしれない。魔法ってこわい。

「人間は呪文に頼りすぎている。それよりもイメージが大事だ」

 アルト様は私から受け取った魔法書をパラパラめくりながらつぶやいた。

「と言いますと?」

「こんなに呪文で細分化しなくても、簡単な単語でも魔法を操ることはできる。イメージが弱いから呪文を唱えることになる」

「だからアルト様たちは呪文を唱えないんですか?」

「そうだ」

 なるほど。今回のミキサーにしたって、単純な風魔法の呪文と野菜を粉砕するイメージだけで十分だったかもしれない。
 学園は呪文をたくさんの暗記する学び方だったけれど、アルト様の考え方の方が使い勝手はよさそうだ。

「アルト様、無理を承知でお願いなんですが!」

「断る」

 アルト様は私に魔法書を突き返して簡素に言った。

「まだ何も言ってないですよ」

「何を言うつもりかわかる」

「じゃあお願いします! 魔法、教えてください!」

「お前は諦めるということをしらないのか」

「はい! それにアルト様だって、暗黒期に魔力必要ですよね? 私の」
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