孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 そう、ひとまず問題はない。
 でもシナリオの強制力が怖い。リイラが、アルトの縁戚だなんて設定はなかった。リイラの両親がゲームに登場した記憶もない。もしゲームに登場するのなら、彼女の両親は魔族の味方のはずなのだから。

 この偶然が怖い。リイラが白の花嫁になるんじゃないか。そんな不安と、もう一つの不安が私をよぎる。

 私はフォスファンの攻略対象たちと出会っていない。フォスファンのモブとして、彼らを遠くから見守る程度できちんと会話したことはない。
 だけど、リイラとは出会っていて。リイラの好感度はあげてしまっているはずだ。

 ――魔王ルートは、ヒロインを奪還しに攻略対象たちが来る。そして誤解は解けないまま、魔王と攻略対象は戦い、誰も幸せにならない結末が訪れる。

 私を奪還しにくる攻略対象はいない。でも、リイラはどうだろうか。
 正義感と意思が強くて慈愛に満ちた聖母のような女性。それが乙女ゲームのヒロインだ。

 まさか、そんなわけないわね。乙女ゲーム脳すぎたわ。

 でも、万一そんな事態になってしまったら。すれ違いから悲劇が起きてしまったら。そうならないためにもリイラと絶対にすれ違わないよう定期的に連絡を取るのもいいかもしれない。
 一方的に手紙を送って無事を知らせるでもいいわ。暗黒期までに対策を取らないといけない。

 暗黒期の訪れはまだ先なのに、不安が私の心を覆った。
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