孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 部屋の明かりが消えると同時に、いくつも小さな白い光が浮かんだ。ふわふわと、きらきらと漂うそれは光の雪のようで。ツリーにも色とりどりの小さな明かりが灯り、うっとりするほど幻想的な部屋になった。

「素敵!」私が叫ぶと、
「アルトって実はロマンチックな男よね」とショコラが笑った。

「でも本当に、こんな素敵なクリスマスの景色見たことないですよ! きれい……イルミネーションみたい」
「イルミネーションとはなんだ」
「あーえっと、光の魔法のことですよ。ありがとうございます。最高のプレゼントです」

 アルト様は照れたように目線をそらす。雪の光が彼の耳を照らす、とんがった耳はやっぱり赤かった。
 嬉しい、アルト様の気持ちが嬉しい。この光景を見せようと思っていたことが嬉しい。

「あ、私からのプレゼントもあるんですよ!」

 思い出した私は、壁にかけていた大きな靴下から包みを取り出した。

「最近寒いですからね。どうぞ」

 二人は包みを開いてくれる。アルト様には紺色のカーディガンを、ショコラにはレモンの色をした腹巻き(一応犬用の服のつもりではある)をプレゼントした。

 編み物はずっと得意だ。クリスマスのたびに父にセーターやマフラーなど編み物をプレゼントしたっけ。一度も着た姿を見せてくれなかったけど。本当にあの男は最低だった。
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