財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
お見合い


 お見合い当日の朝、私は黒瀬家が懇意にしており小さい頃からお世話になっている美容院の椅子に座っていた。この美容院は十時開店だから現在九時半だからまだお客様も来ていない時間だ。


「……あら、可愛らしい。髪はお任せでいいの?」

「はい、お任せします」


 美容師さんにそうおまかせをすると、完璧な大きめのシニオンが出来上がった。ふんわりした髪に、小さい花飾りが添えられていて可愛らしい髪型になった。
 メイクは成人式のような派手ではなく、自然なメイクにして唇にコーラルピンクの口紅をさす。


「どう? こんな感じで大丈夫?」

「え、はい……とても素敵です。ありがとうございます」

「どういたしまして。はぁーでも、この振袖素敵ねぇ……それにあんか小さかった采羽ちゃんがお見合いかぁ」

「私も、実感ないんですよね」

「感慨深いよ。そういえば、どんなお方なの? お相手は」


 あ、相手……聞いてない!どうしよう、普通は相手のことを知ってるのが前提だよね?


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