財閥御曹司とお見合い偽装結婚。



 絹、と言うのは食材の調達をしてくれる使用人だ。調理師としてレストランで働いていたらしくてだからか目利きが良い。


「へぇー美味しそう」

「味付けは私だけどね、美味しいかは期待はしないで」

「ははっ、まぁ采羽は焼き魚苦手だもんな……けど最近は焦げなくなったね」

「うっ……言わないで。最近はちゃんとコツが掴めてきたんです。兄さま、席に座ってください。食べましょう」


 そう言うと榛名兄さまが手を合わせて挨拶をし、それを復唱の途中で「旦那さまがお帰りになりました」と執事が入ってきて言った。
 すると、すぐにお父様が入ってくる。


「お帰りなさいませ。お父様」

「あぁ、ただいま」


 お父様は微笑むと、私を見て「後で話がある。朝食後に私の部屋に来なさい」とだけ告げて居間から出ていってしまった。


< 8 / 55 >

この作品をシェア

pagetop