「とりあえず俺に愛されとけば?」
「早く俺を思い出せよ」




「で?なずな、昨日のイケメンと、あの後どうなったの?」

「え……」

「だからどうなったの?って」

「……見てたの?」

「だって美空ちゃんがイケメンって言うから拝んでおきたいじゃん」




職場の休憩室。どうやら昨日、彼に連れ去られるまでの一部始終を見ていたらしい香澄は瞳をキラキラに輝かせ、お昼ご飯のたらこパスタを突きながら問いかけてきた。




「なんにもないよ結局ご飯は断って帰ったし」

「えー、もったいない!」

「……もったいないって、」

「ところであのイケメン誰なの?」

「知らない」

「嘘!」

「本当」

「ねぇ、それ本気で言ってるの?」

「うん」




ごくりと、たらこパスタを飲み込んだ香澄は目を点にしながらじっと私を見つめてくる。


信じられないとでも言いたげなその表情に「本当に知らないんだってば」と再度言葉をお見舞いすれば腑に落ちないような表情で、たらこパスタをくるくるとフォークに巻いた。


私が教えて欲しいくらいだ。彼が誰なのか。



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