「とりあえず俺に愛されとけば?」
「なずなの花言葉って知ってる?」




「有難う御座いました。彼女さんが喜んでくださると嬉しいです」

「きっと気にいると思います!いろいろと相談にのっていただきありがとうございました!」




目の前で店長と佐倉さんのやりとりを見つめる。
私の好きな人と、私のことを好きな人。異様な光景だななんて冷静に思った。


なんでこの2人が、いまこの場に一緒にいるんだろう。


店長は佐倉さんにおすすめされたブレスレットを彼女さんのプレゼントに選んだようで。お会計を終え、綺麗に包装されたそれを受け取っていた。




「綾瀬もありがとう!付き合ってくれて」

「あ、えっと、いえ、とんでもないです!私はなんにもしてないので……」




ぼんやりふたりを見つめていれば、ふいに森坂店長がこちらを向いて私に言葉を紡ぐものだから、第一声を音にするのに失敗した。


けれど、店長がとっても嬉しそうでつられるように私の口角も自然と緩む。その笑顔は反則です、店長。




「綾瀬がいなかったらここに来れてないから。本当にありがとう」

「とんでもないです」



向けられた笑顔にぎゅっと胸が熱くなった。その顔を見てしまったら彼女さんに喜んでもらえるといいなと、本気で思える自分がいた。



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