「とりあえず俺に愛されとけば?」





「なずな、俺のこと忘れたの?」



ピリッとした空気が流れる。忘れたもなにもそもそも知り合いでしたっけ……?と、甘い声音に責められて懸命に記憶の中の“彼”の姿を探すけれど、どこの思い出の引き出しを開けてもこんなイケメンはヒットしない。


もはや、彼は私ではない“なずな”さんを探していて、たまたま名前が一緒で、顔が似ているだけなのではないかと思う。


もしそうなら、その“なずな”さんが羨ましい。
こんなイケメンの知り合いがいるなんて。


不公平な、世の中だ。



「あの、私の名前はたしかに、なずなですが、」

「……」

「あなたの探しているなずなさんは別の方で、人違い……かと」




じっと目の前のイケメンを見つめる。
そして、見つめ返される。



私の知り合いのはずがない。絶対そう。






「綾瀬 なずな」

「……え」

「初恋の相手、間違えるわけないだろ」



ため息と共に吐き出されたその言葉に、私の思考は停止した。












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