モーニングコール~私と課長の微妙な攻防戦~
……その日。
珍しく遅刻ギリギリでやってきた課長は眼鏡姿だった。
まあね、そうなったのは私のせいなんだけど。

私は毎朝、課長にモーニングコールしている。
課長は朝が、めっぽう弱いのだ。
それを知ったのはほんとに偶然だった。
ある日、買い占める勢いで目覚まし時計を腕一杯に抱えた課長に遭遇してしまったのだ。
あの、冷徹課長のありえない姿に自分の目を疑ったね。

『僕が朝が、弱いんだ』

拗ねたように告白した課長は可愛い……ううん、なんでもない。
それ以来、私は課長にモーニングコールをしている。
そんな申し出をしたのは、ただの気まぐれだったといっていい。

そして今日はちょっとしたことでモーニングコールが大幅に遅れ、課長は遅刻寸前だったというわけ。

それはいまはいい。
それよりも、寝坊したせいか眼鏡姿で来た課長に、胸がキュン、と。
キュン、とね。
時間がなかったからか、いつもより緩めにアップされた髪に、銀縁スクエアの眼鏡が、そこはかとなくセクシー。
さらにスーツが、魅力を爆上がりさせる。
ドキドキするなっていう方が無理、っていうか。

西園(にしぞの)、ちょっと」

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