Dr.luce
しかし、一番ルーチェの頭に強く残ったのはジェニファーのことだ。

彼女はワシントンから遠く離れたフロリダに住んでいたのだが、学校帰りに誘拐され、ワシントンまで連れて来られ、監禁されていたのだという。しかし、売り飛ばされる直前に逃げ出そうとして犯人であるあの二人と揉み合いになり、階段から落ちてしまったそうだ。

(無事に家族の元に帰れてよかった……)

ルーチェはそう思ったものの、あの時感じた違和感を真っ先に口にし、冷静な対応をしたのは一花とクラルだ。経験の差を痛感させられた出来事であった。

(二人のような医師になりたい)

ルーチェはそう心から思った。



忙しい救急科での実習が終わったと一息つく暇などない。次の科での実習が待っている。

「ルーチェ・クロウディアです。よろしくお願いします!」

「アーサー・ウィリアムズです。よろしくお願いします!」

「ティム・ラファールです。よろしくお願いします!」

三人が頭を下げると、研修先である産婦人科の医師も自己紹介をした。

「モニカ・ハイドだ。よろしく」

胸を張って「医師」と名乗れるように。一人でも多くの人を救えるように。

ルーチェ、アーサー、ティムの研修は続く。
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